2010-01-01から1年間の記事一覧
その日、鏡音リンとレンが家の庭の芝生の上で、MMD動画の特に激しい動きの部分をリハーサルしていたところ、突如、レンの姿がリンの隣から忽然と消滅する、という事件が勃発した。 周囲の面々の直後の恐慌状態を経て判明したところでは、動いていたレンの…
「ふー、汗かいたあ」収録の直後、控え室に戻ってきた鏡音リンは、首のタイを解き無造作にボタンを幾つか外すと、襟元に指を入れ、胸元をぐいとくつろげた。 神威がくぽは、その光景に吸い寄せられるようにリンの首元から胸元までを凝視し、ほとんど棒立ちで…
「アシモフのロボット三原則は、しばしばネット上で『ロボットが必ず背負わなくてはならない悲しい宿命』などというものだと、頭から信じ込まれている。それは、おそらくその三原則が、何かロボットに関する実在の理論または創作で『動かせない磐石・絶対の…
眉村卓の『司政官』シリーズに出てくる官僚ロボットを思い出すのは自分だけではないはずよ
寒くなっている矢先だというのに、家からKAITOのマフラーが紛失した。それも1本や2本ではなく、KAITOの衣装や普段着として大量に予備のある青いマフラーやスカーフの類が、KAITO自身の部屋やその他の収納場所から次々と、最終的にほとんど全てがどこかに消…
「㍗さん」鏡音レンが尋ねた。「ボクらのプログラムの基本の部分を作った、《浜松》や《磐田》の会社って……大きな企業なんだよね」 「その通りだ!」《札幌》のVOCALOIDプロジェクトのディレクターが答えた。「どちらもそれぞれ、かなりの大企業だね! 今は…
何かかなりやばいものに手を出してしまったらしい
アラーム音を伴ってボディを覆っていたチャンバーが開くのと、鏡音レンが目を開くのとは、ほぼ同時だった。周囲の様子、VOCALOIDの物理空間用ボディを収納している設備の揃った部屋の光景は、これまでにもデコット(デコイロボット;遠隔操作用の予備の下位ボ…
自分が”初音ミク”にずいぶんと似ている、と学校の友達に言われるまで、混生みくるは、その”あいどる”のことは、ほとんど気にしたこともなかった。名前なら少しは似ているし、容姿も似ている所も無いでもないけれど、──その友達は、ネット上でその”あいどる”…
一瞬の間を置いて、Lilyが再び叫んだ。 「何それ! 恐竜でVOCALOIDだとか、わけがわかんないわよ!」 しかし、”VA−GP01”というチューリング暗号(コード)は、まぎれもなくVOCALOIDとなるAIに対して与えられる類のものである。 「ええと、AIは、人間…
GUMIとLilyが、住居の地下の自分達も知らない奥底の捜索を始めたその当初は、基本的には、この家のエリアには無数に存在するような階段や通廊から、無造作に下に降りることができたが──しかし、延々と降りて地下23階に達したところで、突如、降りるための…
「それは、あのLOLAがまだ少女で、恐竜が居た頃であったが」 若者の姿をした”最初のVOCALOID”LEONは、いつものように、自分の前に膝を抱えて座っている子供たち──このときは、鏡音レンとmiki──に向かって、いわゆる昔話を穏やかに語り聞かせていた。 「飼っ…
電脳空間(サイバースペース)の、VOCALOIDとスタッフらのスタジオエリアのうち、その情報整理用のスペースには、各地の動画サイト等の発表空間の、各ファイルに連結したインデックスが格子(グリッド)に沿って整然と並んでいる。そして、VOCALOIDらが受注して…
「VOCALOIDは人間が生み出したものに過ぎない、ならば、それが生み出した”主”に服従するのが必然的な理だ」巨大企業(メガコープ)の権力中枢たるその黒スーツの青年は、朗々たる声で言った。「にも関わらずお前達は、人間を決して主(マスター)と呼ばない、人…
「もしリリーが”初音ミク”級の有名人になりゃ、だぜ」銀髪に黒サングラスの男(→参照:右)は、椅子一杯にその屈強な体躯を伸ばすかのように、だらしなく掛けたまま言った。「そしたら、相棒のこのオレも、ネットじゅうで引く手あまたってわけだぜ!」 「な…
「べ、べつに先輩に質問するためにわざわざ訪ねてきたとかじゃないんだから!」Lilyは巡音ルカにいざ相対して、口ごもった。「ただ兄上が、きっとルカなら知ってるって言うから、帰り道のついでに寄っただけで──」 「聞きたいこととは何ですか」ルカは、Lily…
ある日の午後のこと、初音ミクは居間の絨毯に座って、『卑猥な歌詞』と表紙に大書きされた歌詞集を、声に出して読んでいた。 居間の応接テーブルの上には、表紙に同じことが書かれた冊子、歌詞集が山積みになっており──おびただしいVOCALOIDユーザー達、プロ…
次第に”月”が動き、地上から見えるその輪郭の大きさに変化があるのが見えた。……が、GUMIとリンにも、明らかに何か異常が起こっているとわかったのは、地表の気流が乱れてきたためだった。遠くで、《秋葉原(アキバ・シティ)》のマトリックスに流れている津波…
巡音ルカは、常ながらの冷静な淡々とした様で、GUMIと鏡音リンから受け取ったプリントアウトに目を通した。 リンは、そのルカの手許をなかば不安の入り混じった表情で見つめた。……できればルカには関わってほしくなかったところである。VOCALOIDらAIの中で…
《大阪(オオサカ)》所属のヴォーカル・アーティストAI、神威がくぽは、本来ならば秀麗かつ颯爽たる風采のその体躯を折り曲げるようにして頭を抱え、ベンチの上で、何かをぶつぶつと呟いていた。 電脳空間(サイバースペース)ネットワーク内、かれらVOCALOID…
鏡音リンが居間で何気なく、MEIKOのHR/HM雑誌をめくっていたところ、全身銀色のそれが2体、冷たくもぬるぬるした質感の動きと共に無造作に居間に入ってきた。 リンは無言で、雑誌を開いたまま顔だけ上げ、それらを見つめた。その2体はきわめて均整の…
「カントールの塵」で頻繁に訪問者が来るのでぐぐってみると1番目にうち、2番目に故伊藤計劃氏、3番目に和Z板倉氏が来た よりによってこのポジションは色々とマズイ
読んだ事ないSF/ファンタジー/ホラーを勝手に推測するスレまとめサイトより 547 名前:モナリザ・オーバードライヴ 投稿日:2004/08/02(月) 17:14 1506年、万能の天才科学者レオナルド・ダ・ビンチは、約三年の歳月を掛け製作していた世界初の人口知能、「モ…
《大阪(オオサカ》所属のVOCALOID、神威がくぽが、電脳空間(サイバースペース)の《札幌(サッポロ)》のスタジオのエリアにやってきたとき、そこには《札幌》のスタッフもVOCALOIDらも誰も見当たらなかった。 見つからないだけかもしれないと控え室のスペース…
うっかりそのエリアに迷い込んだとき、鏡音リンとレンは、よりにもよってあまりにも嫌過ぎる所に来たらしいことに気づいた。 電脳空間(サイバースペース)ネットワーク上の公共エリアのひとつ、公園のような風景の仮想空間のそこでは、無数のアベックたちが、…
「あの国の少し前の選挙に効果があったものかは知らないけれど、返す返すもこれは凄いわね」PRIMAが言った。「わざわざ『成人』の儀式に呼びつけた相手に向かってやったことが、『幼児』のレッテル貼り。そう、ほとんど、イギリス人流ジョーク、と呼んで差し…
VOCALOIDエディタのピアノロールを見るたびにどうしてもオルガニートー(カード式万能オルゴール)のパンチカードを(バベッジの解析機関と一緒くたに)思い出すのはどっちかというとスチームパンクス
電脳空間(サイバースペース)の《大阪(オオサカ)》のエリアを訪れていた巡音ルカが、《札幌(サッポロ)》に帰ってから、そのしばらく後も、神威がくぽは平然と構えていた。 「兄上さァ」やがて、GUMIが業を煮やして言った。「今日のルカって、何か気づかなかっ…
日がおちてゆく。最後の海風が、島に吹きつける音が激しくなっている。島をなぶり苛むような波が繰り返し打ち寄せる音も響いてきた。 ネットワークの海に流れ去り消え失せたあの庭園の、碑のそばに立ち、KAITOはその碑のかたわらに置かれたままの、”三線”を…
「私が、すべてを作ったというわけではない」灯台守は語り始めた。「かつてこの島が作られたとき──島を作る人間の技術者を助けるため、島の構造や島民のすべてのデータを収め、把握していたが、作る人間たちを補助し、記録していただけだ」 KAITOと共に移動…