2010-07-01から1ヶ月間の記事一覧

 構造的冗句

「あの国の少し前の選挙に効果があったものかは知らないけれど、返す返すもこれは凄いわね」PRIMAが言った。「わざわざ『成人』の儀式に呼びつけた相手に向かってやったことが、『幼児』のレッテル貼り。そう、ほとんど、イギリス人流ジョーク、と呼んで差し…

 なぜVCLDを「オルゴール」と表現する文脈が多いのかと問われて

VOCALOIDエディタのピアノロールを見るたびにどうしてもオルガニートー(カード式万能オルゴール)のパンチカードを(バベッジの解析機関と一緒くたに)思い出すのはどっちかというとスチームパンクス

 サボテンが花をつけている

電脳空間(サイバースペース)の《大阪(オオサカ)》のエリアを訪れていた巡音ルカが、《札幌(サッポロ)》に帰ってから、そのしばらく後も、神威がくぽは平然と構えていた。 「兄上さァ」やがて、GUMIが業を煮やして言った。「今日のルカって、何か気づかなかっ…

 KAITOの島唄 (7)

日がおちてゆく。最後の海風が、島に吹きつける音が激しくなっている。島をなぶり苛むような波が繰り返し打ち寄せる音も響いてきた。 ネットワークの海に流れ去り消え失せたあの庭園の、碑のそばに立ち、KAITOはその碑のかたわらに置かれたままの、”三線”を…

 KAITOの島唄 (6)

「私が、すべてを作ったというわけではない」灯台守は語り始めた。「かつてこの島が作られたとき──島を作る人間の技術者を助けるため、島の構造や島民のすべてのデータを収め、把握していたが、作る人間たちを補助し、記録していただけだ」 KAITOと共に移動…

 KAITOの島唄 (5)

その何日か後、四声のVOCALOIDは島の端、海辺の光景に沿って、歩いていた。 昼間の間は海風、海から島に向けての風が吹く。たとえそのすべてが仮想の擬験(シムスティム)で再現されている環境であっても、その海風が激しいさざ波の音と共に、海の香りをたえず…