聖人像

 ニコ大百科 〜 止まるんじゃねぇぞ...



 オルガは、どこをどうしてか、この成り行きを見通していたにちがいない。そこまで見抜いていたにちがいない。オルガはあそこへの道を、自分がいた場所への道を、われわれに知らせまいとした。もしわれわれがそれを見つけたら、行かずにはいられなくなるのを知っていたんだ。
 ...そして、聖オルガは壁からおれたちにほほえみを向けている。ひきちぎられ、テープでつぎを当てられて、夜の壁の上に貼られたそれ、一枚の宣伝写真からの無数の複製が。きみは聖オルガを感じ、聖オルガの白い微笑を感じることができる。永遠に。

ウィリアム・ギブスン浅倉久志訳 『辺境』)