2011-03-01から1ヶ月間の記事一覧
一連のメンテナンスの試験も終わりに近づいたその日、リンとレンはMEIKOに連れられて、かれらが開発され所属する《札幌(サッポロ)》の社の一室にやってきた。そこは、VOCALOIDの研究開発スペースの片隅にある広い一室で、入ってみると試験機器が山積みになっ…
「何をじろじろ見てんのよ」携帯オーディオプレーヤを操作しているように見えた鏡音リンは、不意に、顔だけ上げて、レンを叱り付けるように鋭く言った。 しまった、と思った。今日レンは自分では、できるだけリンの方を見ないようにしていたつもりだったのだ…
「あのさ、その、今の」レンは上体だけ起こしたそのままの、腰がぬけたような姿勢で、かすれた声で言った。 その慌てるレンの姿に、MEIKOは平然と目を移した。 「あの、今の……ボクの、夢さ、ひょっとして見てて」 「ん」MEIKOは何でもないように、再びモニタ…
その糸は、リンと繋がっているのだと、レンにはすでにわかっていた。 ぼんやりした薄暗い光景の中で目をあけたレンが、最初に見つけたのは、自分の右手首に結ばれている、黄と橙の2本の長いリボンだった。これは確か……以前にリンと歌った一曲の、組の衣装の…
「次の演目は、『かわいそうなVOCALOID』という涙と感動の美談よ」MEIKOが脚本の束をめくりながら言った。「戦争になって、人間の奴隷として見世物ショーに使ってたVOCALOIDが逃げ出さないように、毒じゃが食わせてぶっ殺すやつ」 「突っ込みどころが多すぎ…
なにごと