2008-04-01から1ヶ月間の記事一覧

 プリマ・クラッセ

「アンインストールしてやる!」 ロンドンの音大生は、両腕を──とはいえ電脳空間(サイバースペース)内の姿での映像の腕だが──思い切り振り下ろし、絶叫した。 「あら、したらいかが?」 机の上に横向きに腰掛けた、赤い服に短い黒髪の少女は、そちらを見よう…

 例えばこんな供給形態

少女にそれをくれた祖父母らは、オルゴールだ、といった。大切にしないと、『オルゴールの精』が、機嫌をそこねてしまうよ、とも。 しかしその装置(ユニット)は、旧時代の携帯音楽プレイヤーによく似ていた。手のひらサイズの薄い板のような、黒光りする筐体…

 やとげのハイパースペース(4)

その歌詞は、音節が乱数で並んでいるものではなかった。すべて、日本語の単語のフレーズだった。にわかには、普通の歌ではないかと感じられたが、しかしよく聞くと、単語同士の相互の並びは、まったく意味のない配列で構成されていた。(→ニコ動) 「何だ………

 やとげのハイパースペース(3)

「このミクの乱数の歌は──そのとき無限次元へと飛んだミクの意識から、その超空間(ハイパースペース)の姿を、我々のこちらの空間で聞ける形で、しかも実時間(リアルタイム)に持ってきたものだ、というんだ」 プロデューサーは続けた。 「無限の次元の中から…

 やとげのハイパースペース(2)

その数日後にかれらの家を訪れたのは、《秋葉原(アキバ・シティ)》詰めのプロデューサーの一人だった。 「何の話?」MEIKOがプロデューサーを迎えて言った。「村田さんが持ち場を離れてまでここに来るなんて、珍しい話じゃないの」 一家が商業展開地である《…