2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

 神威女難剣紫雲抄(8)

すでに夜も更けていた。思い出せば最初の夜と同様に、星の光がかげり、月光が見え初めていた頃だった。人気のない、まばらな木(フラクタルデータ樹)の立ち並ぶ草地にひとり、神威がくぽはたたずんでいた。 ”七人組”と果し合いを約定したその日、その場だっ…

 神威女難剣紫雲抄(7)

《神田》のVOCALOIDらの所属する社のスペース、和風の屋敷のような意匠が電脳の構造物(コンストラクト)とまぜあわさった広い邸宅と庭園は、高い塀(これも電脳構造物だが、竹か何かを組んでいるように見える)に取り囲まれている。その塀の上、庭園の中から…

 神威女難剣紫雲抄(6)

状況を整理すると──秘太刀、AIの持つ電脳技術の技芸、秘儀を手に入れるために、”七人組”は『結月ゆかり』と申し合わせて、武士VOCAOIDの弱みを握り、その秘奥である”秘太刀”を見せて応戦しなければ絶対絶命となる立場に追い込んだ。しかし、ゆかりの勘違い…

 神威女難剣紫雲抄(5)

「おねがいです……許して下さい……本当に……」 結月ゆかりは弱々しい声で、やっと言った。Lilyの下位プログラムのミツバチ、ウィルトンとウィルティーノが、禍々しい羽音を立てながら宙に浮かびつつ槍を突きつけているのに、おびえきっているように見える(が、…