先生がくぽ劇場
次第に”月”が動き、地上から見えるその輪郭の大きさに変化があるのが見えた。……が、GUMIとリンにも、明らかに何か異常が起こっているとわかったのは、地表の気流が乱れてきたためだった。遠くで、《秋葉原(アキバ・シティ)》のマトリックスに流れている津波…
「その差料は?」巡音ルカは格子(グリッド)の地表を歩きながらも、神威がくぽの手の謎の色彩に輝く刃が、響きを発し糸胞を吹き散らしているのを見ながら言った。 がくぽの手の短めの中太刀は、ソフトウェアの構成は見たところウィザード(電脳技術者;防性ハッ…
がくぽは、その鞘の刀を提げ近づいてくる相手に対しつつ、ほぼ自然体から突立ったるままに右足を引き、剣尖を後ろに落とし『美振(ミブリ)』を車(脇構え)に取った。……そのがくぽの身の位にも、依然、相手は歩み寄ってくるが、その剣尖を向けないがくぽの姿が…
が、そのレンの視界に、疾風のようにがくぽが切り込んだ。『美振(ミブリ)』を陰の霞太刀にとったその姿がレンの目の前に身を沈めたかと思うと、そこから間断も見せず鞠の弾むように宙空へと飛翔した。 「ヘァ!」 気が抜けるような奇天烈な叫びが深林の静謐…
「そう、『神威がくぽ』と『森之宮先生』が、遂に邂逅したのね」MEIKOは重々しく呟いてから、居間に集まった弟妹ら(がくぽを含み)を見回して言った。「……みんな、『ナス+キノコによって新伝綺時代がその幕開けを告げる』という諺は知ってるわね」 誰も知…
※SS投稿所の(中)編の続きもここから※投稿所は移転途中らしいのでとりあえずこちらでのみ
紫と白の少女は、苦悶の汗を額を洗う瀑布の如くに流し続ける青年のかんばせを、そっと撫でるように布で優しく拭った。 「押さえつけて」それから、立ち上がると、リンに言った。「暴れるので」 リンは、この上何が起こるのか、予想してもおそらく全く無駄な…
鏡音リンは自宅のキッチンの裏の、空気を入れかえていた勝手口の扉を閉めようとして、家の方にまっすぐ歩いてくる人影に気づいた。 その二つの人影を見て、リンは最初、すぐ上の姉と兄が帰ってきたのかと思った。が、やがてそれが、自分や兄弟姉妹とはかなり…