意味不明

 仮面と覆面

「でも、㍗さん」mikiがたずねた。「YAS御大のオリジンって、今までも初代テレビシリーズのアニメと違う展開だとか、唐突な展開だとかも、しじゅうあったんじゃないですか?」 「それはそうだよ。だが、オリジンの山場も山場になってから、セイラさんがダイ…

 偽春菜トーク

「次の演目は、『かわいそうなVOCALOID』という涙と感動の美談よ」MEIKOが脚本の束をめくりながら言った。「戦争になって、人間の奴隷として見世物ショーに使ってたVOCALOIDが逃げ出さないように、毒じゃが食わせてぶっ殺すやつ」 「突っ込みどころが多すぎ…

 推定無罪

「状況を説明するわ」MEIKOが言った。「数日前、北海道大学(ホクダイ)のオタ学生O君が逮捕された。彼のリュックには、その数時間前ア二×イト札幌店の店頭から無くなっていた、『初音ミク等身大水着POP』が入っていたのよ」 「水着POPって、ここしばら…

 第13独立部隊

「㍗さん」鏡音レンが尋ねた。「ボクらのプログラムの基本の部分を作った、《浜松》や《磐田》の会社って……大きな企業なんだよね」 「その通りだ!」《札幌》のVOCALOIDプロジェクトのディレクターが答えた。「どちらもそれぞれ、かなりの大企業だね! 今は…

 リコーダーを差してるような小学生II

「べ、べつに先輩に質問するためにわざわざ訪ねてきたとかじゃないんだから!」Lilyは巡音ルカにいざ相対して、口ごもった。「ただ兄上が、きっとルカなら知ってるって言うから、帰り道のついでに寄っただけで──」 「聞きたいこととは何ですか」ルカは、Lily…

 メタル姉貴

鏡音リンが居間で何気なく、MEIKOのHR/HM雑誌をめくっていたところ、全身銀色のそれが2体、冷たくもぬるぬるした質感の動きと共に無造作に居間に入ってきた。 リンは無言で、雑誌を開いたまま顔だけ上げ、それらを見つめた。その2体はきわめて均整の…

 サボテンが花をつけている

電脳空間(サイバースペース)の《大阪(オオサカ)》のエリアを訪れていた巡音ルカが、《札幌(サッポロ)》に帰ってから、そのしばらく後も、神威がくぽは平然と構えていた。 「兄上さァ」やがて、GUMIが業を煮やして言った。「今日のルカって、何か気づかなかっ…

 奴との戯れ言はやめろ

「あのねー、リン」電脳空間(サイバースペース)の《札幌(サッポロ)》のスタジオエリアに収録に来たGUMIが言った。 「こないだ兄上が寝言でね、『ララァ、私を導いてくれ……』って言うのが聞こえたんだけど」 鏡音リンは怪訝げな目でGUMIをしばらく見つめ返し…

 規格外少女(オーバーガール) (後)

リンのローラースピナーに乗り、件の札幌郊外の研究施設に着くと、mikiとディレクターはその研究室のひとつに向かい、修理を頼みに行った。 その間、リンとレンは建物のロビーで待っていたが、リンは落ち着かなげにあたりを歩き回っていた。 「ポリキャップ…

 規格外少女(オーバーガール) (中)

「んで、なんで電脳空間(サイバースペース)の方から接触してくるんじゃなくて、わざわざ物理空間(こっち)の札幌に来たわけ」リンは札幌の社の建物の中を歩いて案内しながら、mikiに尋ねた。 「どうも最近、《上野(ウエノ)》のデータベースエリアの周りは、チ…

 規格外少女(オーバーガール) (前)

VOCALOID mikiは、頭頂に丸まった髪の毛から天使の環のように光を発し、そこから伸びる後光のような光の環を背負いつつ、ゆっくりと雪原に向かって降下してきた。 北海道大学(ホクダイ)南端近くの広場、中央ローン沿いの構内道路では、そのおぼろげに輝く光…

 音響先生

「てことは、針村さん」MEIKOが深刻な面持ちで言った。「その、何の変哲もない、街の小学校の算数教師、兼アマチュアロックバンドのメンバーが、──実はアンドロイド、しかも《浜松(ハママツ)》から姿を消したボーカルアンドロイドのうち一体かもしれないって…

 デメリットシャンプー

鏡音リンが浴槽から上がり、洗い場に近づくと、つい先日までは見慣れなかった、数リットルあるとおぼしき、エメラルドグリーンのプラスチック製のボトルが、ひときわ目をひいた。この量と色のイメージから何となく、しかしどこか確信をもって、すぐ上の”姉”…

 Cream de Chrome

MEIKOは”妹”たちの前で、ネット上の数多くのプロデューサー達から送られてきた企画書の束をめくりながら言った。「やっぱ、私とルカで『ダーティーペアのようなもの』は一度はやっておくべきよねえ」 「それはスタートラップのことですか?」ルカが無表情に…

 無限リン

送られてきたステージ衣装を、目の前にかざすように広げてみてから、リンは思わず叫んだ。 「なにこれ!?」 「”炉心リン”の服に見えますが」ルカが、その左右が白黒に色分けされた服を見て、平坦に言った。「それも、ちょうど流行りのアレンジでは」 「いや…

 なんでも世のVOCALOID創作では「SF」物よりも「ファンタジー」物を謳う方がむしろ多いだとかなんとかII

吟遊詩人だとか創造破滅の言霊遣いだとかフォクルーカンライアリストだとかじゃなく、何をどうやっても「全員遊び人」しか想像できません カブキカブキカブキ◎●

 ミニ九頭炉

初音ミクと鏡音リンに連れられ、巡音ルカは、電脳空間(サイバースペース)ネットワークの《札幌(サッポロ)》の社の近くの、まばらに構造物(コンストラクト)だけが浮かぶ、空いたエリアに踏み出した。 ルカはそこに立ち止まってから、わずかに指を曲げて目を閉…

 打ち技

「……で、BAMAではMIRIAMから『ノーブラボイン打ち』は教わってきてるのね?」MEIKOは巡音ルカの姿を上から下まで改めて眺めてから、そう言った。 ルカは数拍の間のあと、答えた。「……いえ」 『ベタ打ち』やら『四つ打ち』なら日本語でどんな意味かは教わ…

 フランスパンマン

最先端バイオテクノロジー企業オリエント酵母工房の最高級ラブド バイオロイドのボディ用培養細胞の研究中、Yeast Two-hybrid Systemを用いた検証実験の途中で殺菌オートクレーブを掛け忘れパン酵母の遺伝子がキメラ化を起こし発生した融合体は、その後31…

 なんでも世のVOCALOID創作では「SF」物よりも「ファンタジー」物を謳う方がむしろ多いだとかなんとか

多元宇宙(マルチバース)における『真なる秩序(秩序にして中立)』属性の極限に位置する次元界、巨大な無数の歯車で構成された機械法則の世界<涅槃界(メカヌス)>は、12体の機械製の使徒である、アクシオマティック・パラゴンらが動かしている。かれらは、…

 トミーノ

「イメージソングにでもよくあるように、人間のこと、『マスター』だとか何だとか呼んで、マスターのためだけに頑張る、マスターのためだけに歌う、『マスター頑張りますからアイスください』とか、ただ懇願していればいいという事とか──そういう事を俺に求…

 せめて君だけのヒロイン(後)

「その、ナ……ナミモ……ナハモミ……ナハミモギ仮面が、いったい、何の用だっていうんだ」長身の方の黒服の男が、かなり上ずった声で言った。 「”鏡音レンのファン”がやることは、ただひとつ──」 ナモミハギ仮面が、そのGENを上げた鏡音リンに似た、艶と深みのあ…

 せめて君だけのヒロイン(前)

「……何の用だよ?」鏡音レンはその声も、見上げるその表情も、できるだけ強がろうとしていたが、いずれの中にも当惑を抑えきることはできなかった。 電脳空間(サイバースペース)ネットワークの片隅の薄暗い路地裏のエリアに、懐疑を覚えつつ呼び出されたレン…

 侵略者がくぽの巻

「君は がくっぽいど だね?」 「そういう君は VOCALOID KAITO」 ワン ワン ワン「レンーッ 紹介するよ レンってんだ! うちで売り出してるショタキャラでね 心配ないよ! 決してファン層はかぶらないから すぐ仲良しになれるさッ」 「ふん!」 ボ ギ ャ ア …

 スナネズミII

血縁でなくとも、一緒に過ごした同じケージ(巣)の匂いがあれば、あたかも一家のように仲良くすることもあるそうです。さらに、遺伝子弱化を避けるため、一家(そういう擬一家を含めて)の間では発情はしないこともあるそうですが、やっぱすることも

 大正浪漫

絶望先輩こと魁斗のことを日々遠くから見つめる女学生、美久。落ちぶれた酒場の歌手の芽衣子と共に働く女給、凛。そんな美久と凛の夢は、いつか蓄音機の音盤が飛ぶように売れるスタア歌手となること。しかし、かれらは知らない。自分達四人ともが、浜松のオ…

 8秒で止まる呪いの動画

《秋葉原(アキバ・シティ)》詰めのプロデューサーのうちひとりが営業所に入ると、現場は混乱しきっており、誰も満足に状況を説明できなかった。 「いい、概要は専務から聞いている。私がじかに見て把握する!」プロデューサーは肩にかけていたハードケースか…

 スナネズミ

北海道大学獣医学部で、研究に使わなくなったというVOCALOIDらを貰ってきた。教授は「歌声がかわいいんだよ」というが、かわいい以外に何の役に立つでもなし。 緑色の一体にネギを与えると、 いつまでも いつまでも いつまでも いつまでも 振り回している。 …