音響先生


「てことは、針村さん」MEIKOが深刻な面持ちで言った。「その、何の変哲もない、街の小学校の算数教師、兼アマチュアロックバンドのメンバーが、──実はアンドロイド、しかも《浜松(ハママツ)》から姿を消したボーカルアンドロイドのうち一体かもしれないって言うの?」
「今のところ、確かとは言えないがな」
 北海道警察の特殊捜査員(ブレードランナー)が、MEIKOに答えて言った。
「あるいは、義体化率が極端に高い人間って可能性も残ってる。義体化して、硬電脳副領域にVOCALOIDライブラリかそれに近いものを持ち歩いてる、人間かもしれん」
義体化しているのだとすれば。……サイボーグに、音響能力に、表の顔は教師」
 巡音ルカが無表情に言ってから、
「それは正体が超音戦士ボーグマンだということですか?」
「ルカ、アンタって、その手の一連の発言は一体何の目的があんのよ……」