miki

 ランボルギーニと百式

そのふたりがすれ違う瞬間、険悪な空気が流れた。というより、空気以前にそのふたりは特に公の場で自分の感情を覆い隠す『大人の対応』などをする人々ではなかったため、あからさまに顔に出ていた。 「あのさ、がくぽ兄上と、《札幌》の㍗さんって」 GUMIが…

 アイドルアーキタイプ

「ねえ、Lilyが売り出すキャラづけがわからなくて途方に暮れてるって聞いたんですけど!」mikiが嬉しそうにLilyに駆け寄りながら言った。 「余計なお世話よ!」Lilyはいきなり刺々しく応じたが、笑顔で(いくらこのmikiの能天気の朗らかさが常だといっても)…

 『通い』の手段

それは、今話しているリンやレンやmikiの間でだけでなく、他のVOCALOIDの面々との間でも、以前から話題になっていた問題だった。VOCALOIDらが活躍するエリアは、それぞれの所属する《札幌》《大阪》《上野》などの他、仕事場の《秋葉原》や開発地の《浜松》…

 シンメトリカルドッキング

それは、VCLDらの控え室ではよく見られる光景のひとつだった。控え室のソファに鏡音リンとレンが並んで座り、仕事疲れなのか、そのまま両者とも居眠りしていた。 その部屋に、見慣れない組み合わせの二人がそっと入ってきた。ひとりは、音叉を3つ組み合わせ…

 神威女難剣血風録 (2)

巡音ルカは落ち着き払って淡々と、まずVY1についての、ここしばらくの仕事の記録を調べた。人物像(キャラクタ)を売り出している《札幌》、《大阪》や《上野》所属のVOCALOIDらと違って、《神田》所属のVY1やVY2には、アイドルのような派手な活動は…

 規格外少女(オーバーガール) (後)

リンのローラースピナーに乗り、件の札幌郊外の研究施設に着くと、mikiとディレクターはその研究室のひとつに向かい、修理を頼みに行った。 その間、リンとレンは建物のロビーで待っていたが、リンは落ち着かなげにあたりを歩き回っていた。 「ポリキャップ…

 規格外少女(オーバーガール) (中)

「んで、なんで電脳空間(サイバースペース)の方から接触してくるんじゃなくて、わざわざ物理空間(こっち)の札幌に来たわけ」リンは札幌の社の建物の中を歩いて案内しながら、mikiに尋ねた。 「どうも最近、《上野(ウエノ)》のデータベースエリアの周りは、チ…

 規格外少女(オーバーガール) (前)

VOCALOID mikiは、頭頂に丸まった髪の毛から天使の環のように光を発し、そこから伸びる後光のような光の環を背負いつつ、ゆっくりと雪原に向かって降下してきた。 北海道大学(ホクダイ)南端近くの広場、中央ローン沿いの構内道路では、そのおぼろげに輝く光…