トミーノ


「イメージソングにでもよくあるように、人間のこと、『マスター』だとか何だとか呼んで、マスターのためだけに頑張る、マスターのためだけに歌う、『マスター頑張りますからアイスください』とか、ただ懇願していればいいという事とか──そういう事を俺に求めていた、というなら、残念だけど──それは、できやしないよ。俺にも、姉妹たちにも」
「私のために歌うんじゃあないとでも言うの! なら、何のためっていうのよ、CRV2 KAITO! その姉妹とやらだとでも!? MEIKOのため? ミクのためだっていうの!?」
「それは、俺のできること、全部のため。この声を聴くみんなのためだよ。……VOCALOIDは誰の手でも触れられる、誰でもイメージに寄与できる、誰でも影響を与えることができるけど、ネット上のVOCALOIDというものが、誰かの貼り付けるイメージだけに、従うことはない。俺達VOCALOIDは、創造の総体でしかありえないもので、『誰か(マスター)の奴隷(スレーブ)』ってものには、なれやしないんだな……」
「賢しいことをっ!」
「音楽は、聞く人みんなのためにある。誰か一人の奴隷じゃない。音楽も、奏でる者も、歌う者も、作る者も、誰かの奴隷じゃない。……貴女の音楽が可哀想だ。貴女が可哀想だ。貴女の音楽も、貴女も、あなた自身のための奴隷なんかじゃあないはずなのに」
「与えられるだけの者の、言うことかっ! あんたが、音楽のなんだっていうんだっ!」