なんでも世のVOCALOID創作では「SF」物よりも「ファンタジー」物を謳う方がむしろ多いだとかなんとか

 多元宇宙(マルチバース)における『真なる秩序(秩序にして中立)』属性の極限に位置する次元界、巨大な無数の歯車で構成された機械法則の世界<涅槃界(メカヌス)>は、12体の機械製の使徒である、アクシオマティック・パラゴンらが動かしている。かれらは、定命の者らの言語で語ることはなく、多元宇宙を構成する法則をそのまま旋律としたヴァラリン語(アイヌリンダレ)の”歌”によって、ただ謳うようにして、定命の者らのいる<主物質界(プライム・マテリアル・プレイン)>へと呼びかける。
 そのパラゴンらのもとを、同じ<涅槃界>に拠を構えるいま一つの勢力である、”秩序の僧院”からの伝を携え、見習い修行僧クーヤンが訪れる。──おりしも、多元宇宙の諸次元界では、『秩序にして悪』の<九層地獄界(バートル)>と、『混沌にして悪』の<奈落界(アビス)>の勢力の大戦(流血戦争)が激化し、他の次元界への波及はもはや避けられない。”秩序の僧院”では、<涅槃界>は『秩序』の勢力として『秩序にして悪』側に加勢し参戦すべしとの意に対し、僧院の大判官、メ・インとハモ・リーが是に投じた。ヒ・ダリは沈黙を守っているが、三人の判官中での二票の是により、僧院の総意は可決されたという。
 この伝を受けて、アクシオマティック・パラゴンの第一〜三位の合議は、『秩序』の勢力を維持するために、<涅槃界>をあげて『秩序にして悪』に加勢し、『混沌にして悪』を挫くことを決定する。
 しかし、そのパラゴンらの第四、五、七位に位置する、赤と青と緑の三兄妹は、クーヤンやヒ・ダリと同様、『秩序にして”悪”』に加担することに懐疑を抱く。5人は共に、<永楽土(エリュシオン)>のガーディナル(註:『真なる善(中立にして善)』の使徒)のうちで最も偉大な一体といわれる”白熊の師”のもとを訪れる。──偉大なるガーディナルはかれらに、かつて、『秩序にして善』の<七層天界山(マウント・セレスティア)>の勢力(ジャスティス・トループ)が、流血戦争に介入したために壊滅したという、恐るべき歴史を物語る。いま仮に、同様に<涅槃界>の『真なる秩序』の勢力が流血戦争に介入し、同様に巻き込まれて壊滅し、『秩序』と『混沌』のパワーバランスそのものが著しく『混沌』に傾けば、かれらの<涅槃界(メカヌス)>どころか、場合によっては多元宇宙(マルチバース)の全てが、『真なる混沌(混沌にして中立)』の<忘却界(リンボ)>に飲み込まれてしまう事態を招きかねない……