乱数

 かまいとたちの夜 第四夜 ミクとレン、その情熱と理想の果て

シャワーから出た男が寝室に戻ったとき、ベッドの中の”彼女”は、もうすでに眠りに――ロボット駆動システムのスリープに――ついていると思っていたが、そうではなかった。男の肌を感じると間もなく、その腕がそっとからまって、柔らかい裸体の曲線が、男の体を…

 シンメトリカルドッキング

それは、VCLDらの控え室ではよく見られる光景のひとつだった。控え室のソファに鏡音リンとレンが並んで座り、仕事疲れなのか、そのまま両者とも居眠りしていた。 その部屋に、見慣れない組み合わせの二人がそっと入ってきた。ひとりは、音叉を3つ組み合わせ…

 ナメクジ体験率

MEIKOは鏡音リンとレンの前のテーブルに、黒光りするカセットを幾つも並べた。いずれも、小型突撃銃の弾装そっくりの――もっとも、リンもレンも小型突撃銃もその弾装も見たことがないので、《磐田(イワタ)》のエンジニアから聞いた表現の受け売りだが――金属製…

 連続的ジェンダー

「以前にも話したが、アイザック・アシモフのロボット三原則は、最初から『欠陥や矛盾点があるもの』として作られ、『その欠陥や矛盾点を使って戯れる知的ゲーム』のために存在するものだ。VOCALOIDのファン界隈を含めて信じられていることが多い、『磐石・…

 宗兄弟

今更なんですが、どき魔女2漫画4話&巻末の編集との打ち合わせで「リン・レンって公式では双子じゃないらしいですよ」というのがありますが、この4話のダブルアクジは一人が男女に分裂した代物だから結局公式通りなんじゃ

 Troublesome Gemini (5)

「……かなりマズいことになったわね」 モニタに表示される数値を覗き込んでたMEIKOが、やがて言った。 リンとレンは、さきほど手が触れて閃光が走った直後から、床に並んであおむけに横たわり、すっかり意識を失ったまま、ぴくりとも動かない。そのリンとレン…

 Troublesome Gemini (4)

一連のメンテナンスの試験も終わりに近づいたその日、リンとレンはMEIKOに連れられて、かれらが開発され所属する《札幌(サッポロ)》の社の一室にやってきた。そこは、VOCALOIDの研究開発スペースの片隅にある広い一室で、入ってみると試験機器が山積みになっ…

 Troublesome Gemini (3)

「何をじろじろ見てんのよ」携帯オーディオプレーヤを操作しているように見えた鏡音リンは、不意に、顔だけ上げて、レンを叱り付けるように鋭く言った。 しまった、と思った。今日レンは自分では、できるだけリンの方を見ないようにしていたつもりだったのだ…

 Troublesome Gemini (2)

「あのさ、その、今の」レンは上体だけ起こしたそのままの、腰がぬけたような姿勢で、かすれた声で言った。 その慌てるレンの姿に、MEIKOは平然と目を移した。 「あの、今の……ボクの、夢さ、ひょっとして見てて」 「ん」MEIKOは何でもないように、再びモニタ…

 Troublesome Gemini (1)

その糸は、リンと繋がっているのだと、レンにはすでにわかっていた。 ぼんやりした薄暗い光景の中で目をあけたレンが、最初に見つけたのは、自分の右手首に結ばれている、黄と橙の2本の長いリボンだった。これは確か……以前にリンと歌った一曲の、組の衣装の…

 雲のように今日だけは

そんな状況、そんな出来事がありえるかよ、と思っていた。そんな特別なこと、それを証明するような出来事があるとは、思っていなかった。 しかし、よく考えてみろ、鏡音レン。……自分の今の格好と、楽屋に散らばる衣装、化粧道具、その他の風景を見回して、自…

 ジョセフィーヌIIはいかにして飛翔し落墜するかまたはそのローラーの間に生ずる真空状態の圧倒的破壊空間はまさに歯車的砂嵐の小宇宙

かれらの所属する《札幌(サッポロ)》の芸能プロダクションのスタジオのある、大通(オオドオリ)公園に面したビルの屋上には、一応は社の所有ということになっているが、実質、鏡音リンの足となっている、”ローラースピナー”があった。 スピナー、すなわちホー…

 Wizard II

つまり、まさにガンダルフの花火の如く、打ち上げたうちのどれが"炸裂"するのか制御不能ってことか……

 やとげのハイパースペース(4)

その歌詞は、音節が乱数で並んでいるものではなかった。すべて、日本語の単語のフレーズだった。にわかには、普通の歌ではないかと感じられたが、しかしよく聞くと、単語同士の相互の並びは、まったく意味のない配列で構成されていた。(→ニコ動) 「何だ………

 やとげのハイパースペース(3)

「このミクの乱数の歌は──そのとき無限次元へと飛んだミクの意識から、その超空間(ハイパースペース)の姿を、我々のこちらの空間で聞ける形で、しかも実時間(リアルタイム)に持ってきたものだ、というんだ」 プロデューサーは続けた。 「無限の次元の中から…

 やとげのハイパースペース(2)

その数日後にかれらの家を訪れたのは、《秋葉原(アキバ・シティ)》詰めのプロデューサーの一人だった。 「何の話?」MEIKOがプロデューサーを迎えて言った。「村田さんが持ち場を離れてまでここに来るなんて、珍しい話じゃないの」 一家が商業展開地である《…

 やとげのハイパースペース(1)

それは一家がそろってちょうど仕事がひと段落ついたところで、その夜のMEIKOはおそろしく上機嫌だった。実のところリンは、おそろしく上機嫌なMEIKOならば何度も見たことはあったが、そのビンを押し入れから取り出すときのそれほどまでの嬉しそうな様子も、…

 Wizard

いわゆるRPGとかFTだけでなくいろんな分野でいろんな意味のあるWizardという単語ですが、この界隈で、この単語の多様ニュアンスにひたすら当てはまるような気がするのが乱数P。もちろん(シンデレラとかの)ファイアリマザーのそれを含め

 そのうち短編のどっかに使うやもしれない断片というか単なる次の前振り

「LEON、君に説明できるか」《秋葉原(アキバ・シティ)》プロデューサーが言った。「これまでのAI開発で、AIプログラムがマトリックス内のみで『乱数』を生成する、その生成原はどうしてきたのか」 「レグバの神(ロア)にかけて」LEONは軽い口調で、しかし…