アイドルアーキタイプ


「ねえ、Lilyが売り出すキャラづけがわからなくて途方に暮れてるって聞いたんですけど!」mikiが嬉しそうにLilyに駆け寄りながら言った。
「余計なお世話よ!」Lilyはいきなり刺々しく応じたが、笑顔で(いくらこのmikiの能天気の朗らかさが常だといっても)そんなことを言われれば、そうなるのも無理はない。
「誰から聞いたのよ、そんなこと!」
「はい! 私以外のVCLDのほとんど全員がそう言ってました!」mikiは目を輝かせて言った。
「あいつら揃いも揃って……」Lilyが憎々しげに拳を握りしめた。
「それでですね、私、Lilyのキャラ付けなら決定的なのを知ってるんですよ!」mikiはLilyの反応に構うことなく、あたかも突っ走り続けるように話を急かして言った。「『初代マクロスのミンメイが松田聖子』だとしたら、そこからちょっとひねって、『モスピーダのフーケは中森明菜』って感じでキャラが作られたって経緯は知ってますよね!」
「知るわけないわよ! ていうかそれ何の話なの!?」Lilyはmikiの突然の、あまりにも耳慣れない単語の連発にぎょっとして言った。
「つまり! GUMIが、マクロスがらみでしかも『SEIKO』だから、その次にデビューしたLilyは、モスピーダで『AKINA』って感じなキャラで売り出せばいいってことなんですよ!」mikiは目を輝かせて言った。「あ! 今心配しましたね! モスピーダは話にならないくらいマイナーだからって! でも大丈夫ですよ! 日本はともかく、海外ではロボテックのおかげで日本よりはちょっとはましな知名度がありますから!」
「ひとりで一方的に説明して一方的に納得しないでよ!!」Lilyは叫んでから、小さく言った。「全然わけがわからん話なのに、なんだか妙に気になるじゃあないの……」