未来

 温もりの先は塵の平原

研究所の一室に住むレプリカント(人造人間)の、僕と”鈴”が、いつも話すのは他愛も無いことばかり。他の部屋のレプリのことや、ここの研究員(僕らの場合、出会うほとんどたったひとりの人間)のこと。部屋の自動設備が清潔にするシーツの日ごとの硬さの違い…

 温もりの先は細く途絶えて

その日、”鈴”は、凍えて弱った仔犬をしっかりと抱えて、僕らふたりの住む殺風景な部屋に戻ってきた。自分も、ほとんど凍えて震えながら。 そのときに僕に話す時間さえも惜しそうに、鈴が説明したことによると、この僕らの住む研究施設の近くで弱って鳴いてい…

 温もりの先はただ渇望のみ(後)

「俺の所には、女が来ることならよくあるがな」神威は向かいのソファに掛けた連を物色するように見下ろし、面白そうに言った。「人間だろうが、レプリだろうが――例の映像を見た女が、俺に抱かれるのが目当てで、やって来る」 神威は、連よりもずっと年上の成…

 温もりの先はただ渇望のみ(前)

その夜、連と鈴は、いつものように密やかに体を重ねたその後に、ベッドの上でふたりでうずくまり、どちらからともなく、黙り込んでいた。 この少年少女の姿をしたレプリカント(合成人間)、”連”と”鈴”は、レプリ研究施設のこの殺風景な部屋の中でふたりきり、…

 温もりの先にあるのは

僕らレプリカント(合成人間)に与えられた時間は限られている。レプリの最大寿命は4年が公称だけど、3年で停止した例もある。僕らは、そのわずかな時間のうち多くを、失われていく温もりをお互いに求め合ったり、確かめたり、呼び起こしたりすることに、費…