『マルカイオンガンオンベニボルカイコーヘルインクリスマスヒトリボッチ』の歌詞がエルフの吟遊詩人っぽいという意見がある

イングランド言語学者が創作した妖精言語、いわゆるエルダール語には、大きく分けて古語のクゥエンヤと、より新しいシンダリンの2種類があります。いずれもパスワードハック辞書に使われる等で、電脳空間(サイバースペース)ネットワークやハッキングの文化とは密接な関連を持っています。これは、固有の神話を持たない北米移民の文化にあって、架空神話であるアルダ世界の言語が引用されたという背景に関連しています」巡音ルカが平坦に言った。「一神教の儀式を嘆く歌詞に、新興架空神話の妖精言語という異教的フレーズが埋め込んであるというのはかなり手の込んだ仕掛けです」
 ルカの説明をよそに、MEIKOがその歌詞(→参照)を眺めた。
「まあ強いて言えば似ているフレーズがあるっちゃあるかもしれないけど」MEIKOはけだるげに言った。「『オーギルギルエーリ ギルエーリ ギルエーリ』とかはなんとなくシンダリンっぽいかも」
「"gile~li"はシンダリンで『星々の閃き』です」ルカが淡々と言った。
「いや、でもさ、この歌詞をほんとにエルフっぽいとか言い切っちゃっていいの、『ロリツコガ ココロノツマダー』だし、あと」鏡音リンは、その後もぼそぼそと歌詞の一部を口にしたようだが、よく聞こえなかった。
「ご心配には及びません」
 ルカが無表情でリンを見下ろして言った。
「クゥエンヤでは太陽を"anar"、金属を"tinco"と言いますが、火と金属を尊ぶ鍛冶の種族ノルドール族のエルフは日々『アナールッ! ティンコッ! アナールッ! ティンコッ!』と叫びながら踊り狂っているであろうというのは研究者の間では定説なのです」