エキゾチックフレーズ


「この『リラビエ』という単語は、日本語ではないようですが」楽譜のページを開いた巡音ルカが、歌詞の一箇所を示しながら、MEIKOに尋ねた。「ラテン系の外来語のような響きですが、レキシコンには見当たりませんし、仮に造語として意味を推測しても歌詞のつながりからは唐突です」
「あー、それね」
 MEIKOは作詞をしたプロデューサー名を一瞥した。その出身地を思い出したようだった。
「リラ、つまりライラックの花が咲く頃の春の冷え込み、てな意味よ。普通は道内でしか使わないわね」
「非常に風流な単語かと思います」ルカが平坦に言った。「が、にも関わらず、意味に則って『りら冷え』と表記し直すと、途端に一気に『田舎臭い響き』のような気がするのは何故ですか」
北海道弁なんてそんなもんだと思ってればいいわ」