武装ポーカー


「お互いの手に自信があるところなら」二人ともポーカーの札を手に、神威がくぽと卓に向かい合っていた巡音ルカが言った。「単なる夕食代とか、姉妹達へのサービス労働とか、そんなものを賭けているだけでは面白くありません」
 ルカは自分の手札をテーブルに伏せて言った。
「お互いにとって、もっと重大なものを賭けようではありませんか」
「『剣』か」
 がくぽは、カードを握っていない方の手で、自分の傍らの《美振》の柄元を握り、ルカの席のそばに立てかけてあるグラットンソードにも目を移して言った。
「それとも、『魂』か。もっとも、我には同じことだが」
「そんな前時代的な質草には私は興味はありません」
 ルカは平坦に言ってから、
「私が提案するのは、労働や食費と同等以上に社会的であり、さらに、もっと優美な賭けの対象です。すなわち――『結婚』を賭けるのです」
「なに」
「『勝者が敗者と結婚する』のです」
 ルカが無表情で言った。
「むう」がくぽが呻いた。
「いや『むう』じゃないヨよく考えろ」たまらず、がくぽの横から鏡音リンが口を挟んだ。「”勝った”場合と、”負けた”場合と、それぞれどんなことになるかちょっとは考えろヨ。騙されるな」
「人聞きが悪いですね」ルカが無表情でリンに言った。「あくまで合意のもとで賭けようとしているのであって、騙すなどと言う意図も事実もありません」
「てか、ルカと賭け試合を始めちゃってる時点ですでに兄上の負けが込んでる気がする」GUMIがつぶやいた。