生々しい面の露出


「私達の主舞台である動画サイト等のアニメの規制で、いわゆる流血表現や、もっと言うと人体断裂表現などがあった場合、切断面のみが黒や光などで規制されています」
 いきなり巡音ルカが切り出した話題に、鏡音リンはげっそりし、鏡音レンは何事かと顔を上げ、脈絡をそれまでの状況(無言)からなんとか探そうとしていた。
「まるで、手足が切断されるという事実よりも、切り口が生々しい、それだけを覆い隠せばいいと言っているようです」ルカは無表情で続けた。「例えて言えば、『くぱぁ』して見せているという事実よりも、『くぱぁ』の開口部が生々しくグロテスクという事実は動かしようがないということなのです」
 レンはルカの美しい唇から出た今のいくつかの単語に驚愕に目をむいた。リンはますますげっそりしたが、予想外になったという表情ではなかった。
「ですが例えば、切断した腕などが単に転がっている場合、それは人体が断裂したという事実を想起させるからこそグロテスクに見えるわけで、その事実が全くないなら、例えば精肉時に処理した動物の足ということを同時に示せば、生々しい切り口のアップでも問題がありません。つまり切断を一切想起させることがなければ、実際は断裂面でもグロテスクに見えることはありませんし、くぱぁしているという事実を本当に一切想起させることがないのならば、実際にその部分の開口部でもグロテスクではないということです。実際に規制上問題ないかは別として」
「いったい私に何を言いたいんだヨ」リンが、硬直しているレンの分も引き受けてルカに問いかけた。
「私は単にPVなどの映像表現を模索して、さらには、リン達にも折々に触れて考える機会を持って貰えればよい、と日々思っているだけです」ルカは平坦に言った。「なにがなんでもくぱぁとかを出してみたいとか言っているわけではありません」
「なんとかして出してみたいとか言ってるようにしか聞こえないけどそういうことにしとくヨ」リンがうめいた。