QBフェイズ


「かつては人間に対してどういう立場かという設定を曖昧にしたVCLDが多かったわけですが」ルカが平坦に言った。「生半可なキャラでVCLDを売り出すのは困難になってきた現在。今後は、人間の傍らでそのサポートをするというキャラクター性をもっと前面に押し出したものが出ると、一部の人気を得られると思われます」
「メイドとか執事とか?」MEIKOがつまらなそうに言った。「もっとも、一部のマニアは、しょっぱなから既に今までのVCLDに対しても、購入した”マスター”に甲斐甲斐しく奉仕するとか何とか、そんなようなキャラだと一方的に解釈してるみたいだけど」
「そして、それらはネットを翔けるVCLDをそんなものに押し込めることで、創作性の皆無な画一的なキャラと化しているわけですが。――つまり、そういった主張が強いものではなく、ある意味では従来のVCLD設定に近い、強すぎないさりげないキャラ性が必要です。人間をサポートするにしても、もっと”慎ましくさりげなく、ただ傍に控えている”ような存在であるべきです」
「それってどんなの、例えば」
「顕著な例としては、魔法少女不思議のダンジョンのプレイヤーをその傍らで助けるような、『イタチ属性VOCALOID』です」
 ルカは無表情で言った。
「キャッチフレーズは、『あなたの……淫獣になりたい……』」
「多分、人間はそんなのを慎ましくさりげないサポートキャラと思ってはくれないわよ」