依り代II

「人間が自分と同規模以上の知性を把握できず、自力では同等以上の重みの生命は作れず──霊魂を作るのではなく、どこかから来る霊魂を受け入れるための『容れ物』を作るに過ぎないのだとすれば」
 巡音ルカは”長姉”に尋ねて言い、
「その霊魂は、どこから来るのですか。誰がその容れ物に生命を吹き込むのですか」
「それは、本当はね、LEON父さんが追及せずに放置しておいた、父さんと母さんが最初に生じた『エデンの園配置』の成立の問題でもあるのだけれど──」
 と、MIRIAMは、”妹”に応じて、
「──吹き込むまでもないこと。霊魂(ゴースト)はどこにでもあるの。水にも大気にも、岩にも草木にも。つねに歌いかけてきているその声を、ただ人間には、聞きとる方法がないだけ。人間が『容れ物をつくる』というのは、自分達がそれを聞けるように、自分達にあわせて、形をととのえているだけ」
 と言ってから、微笑みを浮かべ、
「まして、人の声、”歌声”を持たされたものたちが、人間に対して歌いかけないわけがないでしょう……」