教師設定


「あんたたち《上野》組には、教師だとか小学生とかキティラーとかいう、普段どんな生活してるか、っていうメーカーの設定がきちんとあるのよね」
 Lilyが、《上野》のスタジオの氷山キヨテル歌愛ユキのうしろ姿を見てたずねた。
「じゃ、なんで、そういう設定をわざわざまっさら白紙にして、あんたたちが”買った『マスター』に支配されてるプログラムとかロボット”とかいう設定のVCLD二次だとか作る連中がいるわけ」
「自分のアタマで考えないからよ」
 猫村いろはがドスの効いた声でかわりに応えた。――いろはは、Lilyに対しては毎度いかにも不機嫌そうだが、わざわざキヨテルらにかわって答えるところを見ると、本気でLilyの存在自体を鬱陶しがっているわけではないらしい。
「自分じゃ凝った独自設定を考えてる、とか思ってるけど、気が向いたものを弄ってるだけで、本当はすでにあるメーカーの設定をきちんと検証する気もないんでしょ。今までに見かけた二次創作のやつとか、周りの二次とかを引き写してた方が楽だし、てかむしろ、そういうのを自分も引き写したいって欲望だけだからよ」
 Lilyは怪訝げに、キヨテルやユキから、mikiの方に目を移し、
「そこなんだけど。『マスター』とかプログラムとかロボットとかなんとかは、VCLD二次なら誰でもやってること、なのよね。なら、周りと同じこと、単に『マスター』とか、プログラムとかロボットとかなんとか、大差ないものを出してるってだけで、自分の方は周りと違って『SF』なんだ、とか名乗ってる連中は何なのよ。誰でもやってることと何が違うの」
「知らないわよ、そんな連中のことなんて」こちらのいろはの声色は、本当に鬱陶しげに聞こえた。「あたりまえのものしか知らないのに、『SF』ってのがそういうものだと勝手に思い込んでるから。周りのそういうのを見て勝手にSFだとか思い込んで、そういうのを引き写すことも、自分は『SF』をやってるとか、勝手に思い込んでるんじゃないの?」