世に種はつきまじ

「現在、かつての日本文化圏にあった旧時代の社会的枠組みは崩壊し、既存の団体等の存続については期待できないということになっています」
「そうなんだ」鏡音リンはげだるげに、片頬をテーブルに押し付けるように突っ伏したまま、巡音ルカの台詞に返答した。
「しかしながら、『麻雀』という文化が存続している限りは、そこに『タコ打ち手』というものは決して断絶することはないはずなのです[要出典]。そこで私が独自に調査した結果、『日本タコ友の会』は今も存続していることが判明しました。──入会手続きをしてきましたが、現在の『タコ麻雀』というもののありようや会員たちの現状について聞きたいですか」
「いや別に」リンは片頬をテーブルに押し付けた体勢から微動だにせずに言った。
 ルカが立ち上がった。
「どこ行くの」リンは首をわずかに動かした。
「《大阪(オオサカ)》へ。がくぽに話してきます」
「奴に話してどーすんだヨやめれって」リンはがばと起き上がって叫んだ。
 リンは一瞬、このルカとこの話題をがくぽの方に厄介払いできるとは思ったのだが、そんなことをすれば、後で面倒が拡大するばかりである。そうなったときにことを収める厄介な役回りが振り込まれるのは、結局リンをおいて他にないのだった。