通信用語の基礎知識 - VOCALOID


 しばしばネット用語の辞典として引用されるこの用語集。VCLDについては、出始めの2008年前半ごろから、すでにかなり詳細な項目が立てられ、音源、キャラ自身、楽曲についても当時としてもそれほど有名ではないが、キャラ的に根強い人気を持つ曲に触れているなど、細に入った言及が見られました。


 しかし、この熱意のあった執筆者が、間もなく飽きてしまったのでしょう、以後はかなり昔の情報のままで止まっています。


 例えばこのMEIKOの項目ですが、最終更新が2011年頃となっていますがおそらく内容から考えて、作成当初の「2007年12月」頃そのままの記事内容がだいぶ残っているようです。
 ちなみに、この2007年末−2008年頭の4−5か月はミク・リン発表前後の「異常な速度があった」頃です。この前後の5か月にはvlcd界隈にとって、冗談ではなく2010年以後の5年の密度がありました。


知名度は低く、あまり売れていなかった」
「ミクやリンの影に消えてゆく運命であることは疑いようがない。だが、歌唱力は間違いなく初音ミクよりもMEIKOの方が上であり、人間くさい歌い方ができる。」


 などというのは、それこそ2007年末当時の評価そのままです。この当時から、MEIKOの出た数もDTMの基準・規模としては異例のヒットであったことは(一般ニコ動視聴者レベルでは)あまり広まっていませんし、それ以上に、この当時はキャラ自体の人気がここまで膨れ上がり、VCLD自体の人気とも相まってMEIKOの新版(V3)が出るなどとは、誰も想像できなかったのですね。
 下の方には当時の「主要曲」として、数万〜数千再生という再生数の記述もそのままに羅列されています。


 また、平沢進の『白虎野の娘』のコーラスがMEIKOである、と書かれています。平沢師匠が「廉価なヴォーカルエンジン」「磨けば人間のプロシンガーに遜色ない『お姉さん』」と言及し、もろもろの材料からこれがMEIKOだと推測され、この『お姉さん』のイメージがMEIKOのキャラ形成(2007−2008年前半当時にたけなわだった)にも少なからぬ影響を与えた、という背景もあるのですが、しかし、この『お姉さん』とは、実際はMEIKOではなくLOLAであったことがすぐ後で判明しています(2008年12月『ユリイカ』誌)。
 (なお余談ですが、MEIKOからさらに大幅に遡ったLOLAの時点でVCLDをメジャー音楽に使用していたことを挙げて、師匠がどれだけ先進的であったかという例えにもよく出されますが、VCLDの当初の本来の目的から考えればテクノの先進者としてはこのくらい当然といえばそれまでの話。)


 純粋なVCLD情報(特に個々のキャラ周り)としては、今となってはまったく「基礎知識」の役には立たないでしょう。しかし2007年末〜2008年頃のVCLDにとって「歴史的」な時期を、その空気までもつぶさに残しているものとしては貴重な記事です。