東京タワーを目印に移動する際に思わず札幌テレビ塔の大きさの遠近感で距離をはかってしまい大幅に時間に遅れたことがあるのは自分だけではないはずだ


「わたし……気づいたの。無くしてはじめて、大事さがわかるものがあるって」
 初音ミクは顔を俯けて、低く言った。
「最初から、覚悟はしていたから……この東京には、やきそば弁当も、カツゲンも、ガラナも、ナポリンもないってことだったら。でも……わたし」ミクは顎を反らし、胸の裡からあふれ出すように、「セイコーマートの三色鶏飯がなかったら、生きていけないもの……!」
「──帰ろう」KAITOは静かに見下ろして言った。「俺達の街……札幌へ」
「カット!」《札幌(サッポロ)》の社のPVディレクターは、メガホンを持って二者に叫んだ。「いいよいいよー最高だよ! ──どうですか、メ……姐さん(プロデューサー)! 今の最高じゃないですか!?」
「いや、あのね㍗さんどこが使いどころなのこれ」誰かに非常によく似ているように見える《札幌》の女性プロデューサーのひとりは、その収録風景を見て言った。「道外に出てる道民にしか通じないでしょう」