スニフ号


 『楽しいムーミン一家』で登場し、その後も『ムーミンパパ海へ行く』等しばしば活躍するパパの船といえば冒険号です。浜に流れ着いていたこの船を一行が入手したときの各人の命名案は以下の通り:


スノークのおじょうさん「ちびさん」
スノーク兄「海の鷹」
ヘムレンさん「ムーミナテス=マリティーマ」(羅:海洋性ムーミン的なんたら)
スナフキン待ち伏せる狼」
スニフ「スニフ号」
ムーミンママ「冒険号」


 スノークのおじょうさんのは、しずかちゃんが百式のような巨大ロボ・ザンダクロスに「ラッコちゃん」という名前をつけようとしたのを思い出すところで、しずかちゃん同様「痛い面」を含めて少女のステロタイプを故意に付与されている表れ。なお、毎度のことですが、採用されたのは最後(谷の最後の良心であるムーミンママ)のものです。


 それはさておき、このうち直球すぎるというかあんまり酷過ぎるスニフ号がムーミン読者の間ではよく話題になります。
 ムーミントロールはこのスニフに、
「おまえとおんなじじゃあないか。きにくわんねえ。」
 という、あの平成版の高山みなみムーミンボイスの温厚さ(を通り越してダウナー)からは想像もできないような合いの手を入れます。まだ『大洪水』『彗星』の雰囲気が残っているこの『一家』の当時、ムーミンにとってスナフキンが繊細な(大人の)意味での友人であれば、スニフはムーミンの第一の悪童仲間・悪友で、欧米のホームドラマによくいるちっぽけで生意気でちと憎たらしい悪餓鬼的な位置づけです。が、以後、スニフはどんどん出番が減って守銭奴ネタ以外では登場しなくなり、ムーミントロールは悪童面より、スナフキン、トゥーティッキーやモランのような「大人」(そういう意味で大人として見る対象としてはムーミンパパは論外)を遠くから眺めて内面を磨く面が強調されるようになります。


 何の話だっけ。そうそうスニフ号ですが、《千葉(チバ)》を走るいすみ鉄道の「ムーミン列車」にはまんま「スニフ号」という名が採用されています。誰得。いやスニフ得ですが