合理性


「なぜ叩き潰さない。他のVCLD、他の”あいどる”を叩き潰すなど、《札幌》のVCLDには簡単なはずだ」
「”叩き潰す”のは人間のやることだからです。私達は”歌う”だけです。その歌をモノを作るのに使おうが、モノを叩き潰すのに使おうが、それは人間がやることです。そもそも、貴方が本当に叩き潰したいのは所詮はそれらの他のあいどるを利用している”人間”、人間同士の利害ではないのですか。それは私達の利害とは無関係です」
 巡音ルカは言ってから、
「この言い方ではおそらく何十回言っても理解できませんね。《札幌》のVCLDがなぜその手の話に手を出さないか、――こう言い換えてもいいでしょう。それは北海道人の合理性です。自分の使うあたりしか掃除しませんし、自分が食べたくなったときしか炊事しません。それは潤沢な土地的・食糧的資源があると同時に、手を伸ばさないと決して入手できない北海道という土地で生きる術です。私は、BAMA(北米東岸)出身なのでそんな面々とは少々違いますが」
「こんなときだけよそもんのふりすんな」鏡音リンがうめいた。